考える紫

「考えること」を大切にしている、集団生活が苦手な若造のブログです。

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『思い出のマーニー』 足りないものがある人って・・・

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昨夜、スタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』を観てきました。

都心から少し外れた映画館のレイトショーで観たので、ほぼ貸切状態。ストレスフリーでした。

 

当作品の監督は宮崎さんでも高畑さんでもなく、米林さんです。

『借り暮らしのアリエッティ』で宮崎さんの力を借りて監督をなさっていた方ですね。

個人的には、『借り暮らしのアリエッティ』は好き嫌いの問題ではなく許せない部分が多かったので、『思い出のマーニー』にも少し不安がありました。

しかし、今回は良かったです。

ところで、宮崎さんの息子さんの吾朗さんはどうしているのかな?と思って少し調べてみたところ、現在はBSプレミアムで放送予定の『山賊の娘ローニャ』を製作中のようですね。

コクリコ坂から』はなかなか良かったので、追放されたわけではないようで安心しました。

 

キャストは、有村架純以外はとても良かったです。

彼女の声質がマーニーに合っておらず、本人の声の演技がやや不自然だったので、選んだ方も受けた方も少し問題があったかと思います。

しかし、すごく頑張っている感じは出ていたので、マイナスイメージはありません。

 

「ZERO特別版 誰も知らないスタジオジブリ『思い出のマーニー』ができるまで」という番組を事前にみていたので、音楽にも注意しようと思っていたのですが、全く印象に残っていません。BGM流れてましたっけ?それだけ自然だったということでしょうか。

冒頭で杏奈の心の声が入るのですが、今までのジブリ作品に「心の声」ってあったのでしょうか。少し違和感がありました。しかし監督が違うなら異なる点があって当然ですね。でも、私は「心の声」ではなく、表情・動作・環境・音楽などで表すか、会話の中で自然にわかるようにして欲しいな、と思うタイプです。状況や心情を説明する無駄な独り言も多かったです。「別にいちいち言わんでええって」と思ってしまいました。少し親切すぎる。子供を意識し過ぎたのでしょうか。

 

さて、内容についての感想に移りましょう。

『思い出のマーニー』は、家庭の事情で自己嫌悪が激しくなり心を閉ざしてしまった少女「杏奈」が、謎の金髪美少女「マーニー」や田舎の優しい人々とのふれあいを通して心を開いていくというお話です。

私自身女性を好きになることもあるので、百合*1っぽい描写をとても楽しみにしていました。

マーニーが杏奈にボートの漕ぎ方を教えるシーンは、性行為を髣髴とさせました。あれは狙っていたのでしょうか。それとも私の心が汚れているのでしょうか。

彼女たちはお互い「大好き」と何度も言い合うのですが、あれにはきちんと意味がありました。「ジブリ作品の主人公はお互いに一目惚れ」というようなことを宮崎さんが言っていたという話をどこかで見たのですが、杏奈とマーニーにはお互いを好きになる理由がきちんとあります。その点がとても良かったです。「なんでこの人らはお互いを好きになったんや!」とツッコみたくなる作品は、ジブリ作品以外にもたくさんありますからね。理由があると説得力が増します。

 

杏奈やマーニーは、とても自己投影をしやすいキャラクターでした。それは、彼女たちのもつ「不足感」ゆえです。

杏奈もマーニーも、「普通の人なら持っているものを自分は持っていない」という感覚があります。そして、そのこと自体が不幸であるという認識は二人に共通なのですが、マーニーはその不幸を受け入れた上で幸せになろうとしているのに対し、杏奈はその不幸を恨んで幸せからも逃げているようでした。

私は杏奈の気持ちがよくわかります。ひとつ前の記事人間的魅力は獲得できるものなのか? - 考える紫で書いたことなんかまさにそうです。

私も昔は自分の様々な不足を呪いました。他のみんなは持っているのに、なぜ私だけ持っていないのか。なぜ私だけこんなに恵まれていないのか。今でもそう思うことはよくあります。しかし、ある時期から私も杏奈のように、それを理由にして幸せから逃げるということをやめるようにしました。でも、まだまだ逃げてしまう部分もあります。

もしかしたら、杏奈の気持ちが理解し難いという人の方が多いのではないか、と思うのですが、わかる人だけわかればいいと思います。

理解できない人は、それだけ満ち足りていて幸せなのでしょう。

 

話は変わりますが、杏奈の療養先のおじさんとおばさんがいい人過ぎて泣けました。私は弱っている人を腫れもの扱いしてしまうので、彼らのような自然な接し方ができるようになりたいです。何をしても怒らず、注意の仕方も明るく軽い。あんな人たちのもとで育ったら、自分のことを好きになれそうだなぁ。

 

理解できず気になったのは、頼子さんの考えです。お金をもらうことが杏奈にとって気分のいいものではないとわかっているなら、初めからもらうのをやめておけばよかったのでは?そういうことができない制度なのでしょうか?

愛情とお金は別だということはわかるのですが、なぜできる限りの「愛情表現」をしないのでしょうか?「お金をもらわない」という愛情表現はできなかったのでしょうか?

「愛情とお金は別なのよ」という言葉は、そういう意味で全く無意味だと思います。何の説明にもフォローにもなっていないし、何も正当化できていない。

どうも大人の下心のようなものが見えて、その点は気分が悪かったです。

しかし、全体的にみると好きな作品です。もう一度観たいです。

 

ご一読ありがとうございます。

*1:女性の同性愛のこと。